総合格闘技は戦略ゲーム。試合中も割と冷静です

 

柔術の日本トップクラスから総合格闘技(以下MMA)へと転向し、輝かしい戦績をおさめている格闘家の風間敏臣選手。KOSMIC MARKETのアンバサダーを務めていただいているご縁から、Road to UFC決勝戦(日本時間2023年2月5日:ラスベガス)というビッグマッチ直前にインタビューが叶いました。

 

--格闘家の方は体重制限などもあるのでストイックな生活をおくっているイメージがあるのですが、実際はどうですか? 1日の過ごし方も教えてください。

 

1年のうち8カ月くらいは減量期間なので、カロリーや脂質は常に気にしています。商品の表示ラベルを見るのが習慣になってしまっていますね。その反動で、減量が終わるとずっと食べ続けている感じです。母親が止めに入るくらい食べます(笑)。減量前と後では13kgくらい体重が変わります。

 

朝、減量中は1時間くらいウォーキングをしてから朝食。その後、練習、昼食、練習、5〜6時間の睡眠、という感じです。毎日がその繰り返しです。日常が変わらなすぎて、SNSで何を書けばいいのかわからないんですよ。練習は寝技、立ち技、スパーリング、ボクシング、キックなど。総合はやることが多いです。デビュー戦の前はどこでも勝負しようと思っていましたが、実際には打撃もレスリングもできない、寝技しかできるものがありませんでした。今思うと、試合前に負けていましたね。

 

--体調管理やメンタルケアはどのようなことをされていますか?

 

サプリメントでビタミンを摂ったりするくらいです。特別なことはしていません。365日、どこかしら痛いし、どこかはケガをしています。万全な状態で試合に臨める人っていないんじゃないですかね。試合前のケガを回避するために練習のスパーをやらないとかいうのはないです。試合中に靭帯を切ったこともありますが、ケガで試合に出られなくなるなら、自分はその程度の人間なんだって思っています。

 

メンタル面のケアも特にしていません。所属しているジムの人たちも仲間という感覚ではないです。同じチームではあるけど、自分と同じ階級の人もいるしランクの奪い合いをする相手です。トレーニングをしている場所が同じというだけ。ほとんど話もしません。格闘家って一人一人がひとつの会社を経営しているような感じです。結局、試合をするのは自分。自分の人生でしかないですから。

 

--フィジカルもメンタルも常に緊張感がある状態なのですね。風間選手はご家族との仲がとても良いと伺いました。身近なご家族のサポートがあるからこそ、孤独な闘いを続けられるのでしょうか。

 

MMAに転向する時には両親に反対されましたが、今は応援してくれています。兄も減量期をサポートしてくれていますし、家族に感謝しています。

 

--UFCという大舞台への道が現実的になってきました。ずっと目指してきたのですか?

 

あんまり、先のこと、まったく触れていないところのことを考えるのが苦手で、どこのベルトが欲しいとか考えたことはありませんでした。戦いたい選手がいて、その人とやり合うためにはランカーにならないといけないという感覚でしたね。

ただ、UFCのシンガポールに行った時に、ここが望む場所だと感じました。チャンピオンの試合を見て「この地位が欲しい」と初めて思ったんです。

 

--試合を拝見していても思うのですが、風間選手はとても冷静ですよね。

格闘技って、殴り合い、喧嘩のように思われるかもしれませんが、MMAは戦略ゲームだと教わりました。相手の弱点を突いて、戦略通りにやればいい。だから、試合中も割と冷静ですね。

 

--格闘技一色の毎日のようですが、幸せを感じるのはどんな時ですか?

 

試合の翌日がいちばん幸せです。減量期間中や試合前は、どんなに空が晴れていても自分には曇っているようにしか感じられないんです。試合があった日は大体眠れないので、早朝に散歩に行くんですが、その時はものすごい青空に感じられて気持ちがいいんです。勝つためというよりも、この空を見るために試合をしていると思えるほどです。

 

--どんなに空が晴れていても曇りのように感じるとは! 風間選手がどれだけ厳しい精神状態にいらっしゃるのかが垣間見えました。ラスベガスで行われる大きな試合を控えていますが、ファンの方へのメッセージをお願いいたします。

 

応援してくださる方々へ

いよいよラスベガスで行われるroad to UFCの決勝戦が近づいてきました。

次に日本に帰国する時、UFCファイターとして帰って来れるのか?自分はその存在に値するのか?他の誰よりも自分が楽しみで仕方ありません。

自分や応援してくださる方々に残念な思いはさせないので勝利をした時全力で喜んで頂けたら嬉しいです!
勝って帰ってきます。

 

インタビューを終えて

「自分の人生でしかない」という印象的な一言には、自分の思うままに進むことへの覚悟と自信が凝縮されているように感じました。自分の生き方に迷いがないからこそ、ありのままをさらけ出せ、その清々しさにファンは魅了されるのだ、とも。

 

風間敏臣:かざま としおみ